『寡夫』と『寡婦』~所得税法の定義から思うこと~
今回は所得税法上の定義から日本の法律の特徴を伝えられたらと・・・
我が国の法律は諸外国の法律を取り入れてできたものでありますが
ちょいちょい国民性といいますか、独特な考え方が反映されています。
日本らしさが残っているのです。まぁ~こんな法律が私は好きですが。笑。
その例の所得税法の規定をみてみましょう。
所得税法§2
三十 寡婦 次に掲げる者をいう。
イ 夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するもの
ロ イに掲げる者のほか、夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、第七十条(純損失の繰越控除)及び第七十一条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における第二十二条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下この条において「合計所得金額」という。)が五百万円以下であるもの
三十一 寡夫
妻と死別し、若しくは妻と離婚した後婚姻をしていない者又は妻の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有し、かつ、合計所得金額が五百万円以下であるものをいう。
これは所得控除の要件の『寡婦』『寡夫』を定義で規定したものになります。
何を申し上げたいか? → 男と女で要件が異なるのです。
規定が『寡婦』は2つありますね。
あと珍しく女性の規定が、条文上、先に規定されていますね。
理由は知りませんが。笑。
これをみると、イもしくはロのどちらかにさえ該当すれば
所得税控除が受けられます。
『寡夫』は かつ で要件が上記より厳しいことがわかります。
お母さんに自立していない子供等がいれば、
生活が大変だろうからという配慮だと思いますが・・・
(立法趣旨を確認しておりませんが・・・)
女性の方が控除対象の範囲が広くかつ税効果も大きい規定になっています。
この規定は、今の世の中でしたら、憲法に抵触するでしょうね。笑。
賛否はともかく、明らかに平等ではないと考えるからです。
確定申告をしていても、女性も高額所得者たくさんいます。
周りには 主夫 だっています。
配偶者に関する控除だって、全く働かない方が税メリットが大きかったわけですが
直近で改正されたので、多少は改善されましたけど
家のことだけをしていることを税制は推奨していたわけです。笑。
日本人らしいと思いませんか?
法律は慣習や道徳、宗教観といわれるものが
歴史上、成文化されたところもあります。
このような規定をみるとその名残を感じます。
“ Defend desperately & Keep Attacking ”
SAS Tax Artist Office
租税訴訟補佐人税理士
TaxArtist® 水島 洋之