借用概念って
税法固有の規定が存在しないので
他の法律の定義を税法にそのまま採用することです。
裁判でも学説でも議論があるところです。
税法の規定がないものはすべて借用概念って決まっていれば
問題は少なくなるかと思われますが・・・・
時には借用概念、時には税法の解釈が入るので
問題にもなりますし、税法の面白いとも難しいとも
感じるところにはなります。
まぁ~興味のない人からすれば、厄介なんですね。
わかりにくいんですね。
これに関する有名な租税裁判をみてみましょう。
住所を巡る解釈の武富士事件というものがあります。
租税回避するために民法が規定する住所から
納税者は形式上の要件を満たし、国内の住所から
意図的に外れたところにこの裁判はあります。
つまり、海外で生活することによって
日本に住所がないってことになったのです。
それも租税回避するためにと法廷で話したのです。
とはいっても、国税側は実態は異なると主張、
納税者は法定通りだと! → 納税者が最終審で勝訴!
※裁判長:✕ってしたかったが、法の限界があると・・・・
最高裁判決の通り、すべてが私法上の規定と同じように
税法の文言を当てはめても、税法は必ず 正 とはならないのです。
では、何を 正 として信じればいいのですか?
ここで前提を整理する必要があります。
なぜ、税法上の文言が私法の定義と異なる場合があるのか?
※税法が私法で定めるものと異なる概念を規定している場合を除きます。
税法
私法秩序を前提として、
そこで行われる経済活動又はその成果である
各種の収入等の担税力ある事実を捉えて、
それに応じた公平な課税の実現を目的としている。
私法
私的自治の原則を前提として承認し、
その補充的、任意的な規定として、
当事者間の利害を調整することを目的としている。
簡単に説明すると、そもそも法の目的が
全く異なるのだから、私法の定義と
異なる意味の文言が税法の中に
存在することがあるってことなんです。
異なる意味を採用した場合は
すべて個別に税法が規定されていれば
問題が起こらないのですが、
法律はそこまで完璧ではないのです。
上記裁判長は税法で個別規定がないのだから
課税の公平って税法の目的にあっても
法で✕ってできないって判断したのです。
憲法が定める 租税法律主義 を重視したのです。
ここの学説も結局は
租税法律主義 VS 課税の公平 なんですね。
∴ 何を 正 とすればいいのですか?
ここからが回答がない世界に突入しますが、
現在の法廷は借用概念はどちらにも振れるわけですから、
税法の目的や立法の趣旨に、私法の概念を当てはめをして
違和感があるか否かの判断になります。
もちろん法的安定性という意味で多くは
私法上の規定を重視するところからですが、
それがすべてではないってことです。
当てはめをした時に税理士は
違和感って 温度感 を感じられるかどうかが
腕のみせどころになるんじゃないでしょうか。
税務調査でも要検討事項になることでしょう。
裁判の当事者の武富士さんは今はありません。
会社の業績が良すぎて相続税対策をしたのです。
皮肉なお話です。平家物語冒頭を思い出しました・・・・
今回はとても難しいお話で失礼しました。
“ Defend desperately & Keep Attacking ”
SAS Tax Artist Office
租税訴訟補佐人税理士
TaxArtist® 水島 洋之