考察 混合配当裁判とその後

明けましておめでとうございます。
今年もこの場を借りて
有用な情報や税理士の仕事を
継続して発信できたらと考えています。
何卒、よろしくお願い申しげます。

今年もいつでもご照会下さい。

今年1発目から法解釈です。難しいです。
でも面白いと思います。税法の忖度が見え隠れします。
そして、税理士が判決内容を把握していなければ
法令だけで判断すると事故が起こるケースになります。

最高裁令和03年03月11日判決
同日の混合配当の裁判になりますが、
こちらは法人税法の不備を指摘し、
プロラタの新たな計算が判決により示されました。
資本金等と利益積立金の計算です。
法人税法の最高峰の難易度
いわゆる純資産の部の税務です。

その後、課税庁のHPで判決の内容が説明され、
同日の混合配当につき、更正の請求を促す発表がされました。

そして、令和04年04月1日から改正税法が施行されて
下記の法令になったわけです。

しかし、

法人税法施行令§23①四
『法第二十四条第一項第四号に掲げる資本の払戻し又は解散による残余財産の分配 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額
イ ロに掲げる場合以外の場合 当該払戻し等を行つた法人の当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等(当該直前の資本金等の額に(1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、(1)に掲げる金額が零以下である場合又は当該直前の資本金等の額が零を超え、かつ、残余財産の全部の分配を行う場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額(当該払戻し等が法第二十四条第一項第四号に規定する資本の払戻しである場合において、当該計算した金額が当該払戻し等により減少した資本剰余金の額を超えるときは、その超える部分の金額を控除した金額)をいう。)を当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額
(1) 当該払戻し等を第二号イの分割型分割とみなした場合における同号イに掲げる金額
(2) 当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は当該解散による残余財産の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額(当該減少した資本剰余金の額又は当該合計額が(1)に掲げる金額を超える場合には、(1)に掲げる金額)』
※一部法令、カッコ書き省略

判決内容である、
同日混合配当の場合とは成文化されておりません。
資本と利益の原資を資本一本で計算するとも規定されていないです。
資本金等の額がゼロ以下って、
利益積立金がマイナスの状況であるということです。
そのような状況の中で利益を原資とした配当にも
もちろん触れられていません。
今までは法が想定していない取引だったかもしれませんが・・・
今回の判決で明らかになったので、
明確に謳われることを期待しました。

この裁判を知らない者が、改正税法だけを読むと、
利益積立金がマイナスで同日の混合配当があった場合、
法令通りの処理として
資本金等 / 現金預金 ・・・資本の原資を限度額まで。→ 改正に該当。
資本金等 / 利益積立金 ・・・利益の原資は資本の取崩 → 成文なし。
という処理をすることになるでしょう。
※現金預金は科目合わせ。
※『改正税法のすべて』では、裁判の経緯だけでその内容について触れられていない。

この最高裁判決の射程はこの事案だけなわけがありません。
課税庁が同日混合配当の更正の請求を判決後に促し、
今もサイトに掲載されています。
それに合わせて改正・施行もされたわけです。
判決と同じ内容であれば、拘束力は及びます。
なんたって最高裁判決ですよ。

なぜ?成文化されなかったのか考えればいいのです。
生意気にも立法の背景について、私見を述べさせて頂きます。
上記改正法令で利積のことに触れますと、
会社法の財源規制にまで影響が及ぶからでしょう。
会計の利益はプラスで会社法に抵触しない配当をしたわけです。
税法でその取引を資本の取崩というのは難しいです。

では、この混合配当はどう法令を解釈すればいいのですか?
判決通り、課税庁のHP通り反映された法令とみなして、
解釈するのが正解でしょう。背景をみれば、これしかないです。
両者を資本の原資一本として、計算してゼロ以下になれば
法令通り処理すればいいのです。
資本を超える差額は判決同様 みなし配当 とすればいいのです。

前提が最高裁事例と同じであれば、判決通り処理しなければ、
『違法で無効』
と指摘されますよ。全く同じ状況の取引なんですから。

もし資本を原資とした配当をして、
翌日に利益を原資とした配当になれば、
同族会社の行為計算の否認規定に抵触せず、
かつ、会社法上、有効な配当であれば、
資本を原資とした配当は上記法令通りの計算になり、
利益を原資した配当は個別の処理となり、最初に触れたように、
資本金等 / 利益積立金 
になるのでしょう。※筆者私見

よって、
法令だけでは答えが出ませんで、
だいぶ背景を考慮しましたが、
最高裁判決通り、同日の混合配当のみ
両者を資本の原資とみなして、
プロラタ計算をし、資本を超える部分は、
すべて みなし配当 として扱われるでしょう。

解釈のキーワードです。
〇最高裁判決 → ×高裁
〇租税法律主義 → 法は完璧ではない。
〇会社法と税法の立ち位置 → 利益と利積
〇訴訟後の課税庁の発表 → 今も更正の請求を促している。

今までも法律なのにグレーな扱いってありました。
裁判を知らなければ 違法で無効 と
お客様が言われる事例でした。笑

今年も裁判みていきます。
裁判を読んでいることで
判断できる事案が毎年数件あります。
これもそのうちの1件でした。

興味があればご照会下さい。
全国対応しています。

租税訴訟補佐人税理士
TaxArtist®水島洋之