不動産で過度な相続税対策をして
課税庁との争いになっている裁判で
最高裁が嫌な上告審弁論を開くと決めました。
こちらを仕切っているのは
職業外交官の長嶺安政裁判長です。
私はこの事案は認められるべきではないと考えています。
課税庁の主張に賛同という意味です。
ネットの記事をみると評価方法ばかりが一人歩きしています。
違うんですね。租税回避丸出しの事案で
課税庁は威信をかけて訴訟に臨んでいることでしょう。
記事になっていない部分を私が整理しましょう。
簡単にいうと不動産を買って
相続税を圧縮したという古典的な良くある事案です。
取得した北海道の被相続人は恐らく91歳の頃に
〇杉並 取得価額 837,000千円 借入 670,000千円
〇川崎 取得価額 550,000千円 借入 425,000千円
の土地建物を取得しました。
これにより、相続財産の評価額が
600,000千円超 あったものが
借入と相続税評価で 28,261千円 になり、
基礎控除で納税ゼロにしています。
更に相続税を回避した後に、
川崎の物件を 515,000千円 で売って現金化しました。
譲渡損を計上し、借入返済して更に手残りを得ました。
あえて言いますが、
えげつないでしょ??笑
どうでしょうか?
90歳超の裕福な爺さんが子供に財産を残すために
借金を11億円弱して、2物件を取得したのです。
恐らく東京の物件をみたことがないまま
お亡くなりになったことでしょう。
そして相続税ゼロの本来の目的を達成し、
相続人は譲渡をして現金を手にします。
1億円弱のお金を無税で。
富裕層がまた富裕層でいられることでしょう。
ちょっと常識の範囲を超えていませんか?
相続税の目的も超えていませんか?
そもそもなぜ不動産を取得したのですか?
90歳超の爺さんが積極的に不動産ビジネスをしますかね?
そして1物件は相続人により短期所有譲渡にて現金化。
更に訴訟内容をみると孫で養子縁組を戸籍を変えて相続税対策。
まぁ~、税金が減ることは何でもやった感ありますね。
節税を謳い文句にして、商売のカモにされたのかもしれませんが
相続人の意思でとことんやったことには違いないです。
これが認められたら、施設に入っている超高齢者の
不動産取得が増えることでしょう。
税収としての相続税は大きく減ることでしょう。
法律論ではありませんが、
こんなこと、この国のためになりますかね?
道義的にいかがなものでしょうか?
課税庁側は伝統的にこのような事案は評価方法で争います。
総則六項の伝家の宝刀で評価額を修正し、
課税処分をしますので。
納税者は通常の通達評価できているわけですから・・・・
だから通常の評価方法が認められなかった!
と記事はちょっと違うんですよね。専門家目線は。
今までは裁判官がその納税者の租税回避の前提を汲んで
判決してくれた歴史があります。消費税の還付と同じです。
私含め、多くの納税者は財産評価基本通達で
財産評価した申告でパスしています。
課税庁は、不動産取得の経緯、背景から
通達を悪用したとみなした納税者には
待ったをかけてきました。
もちろん明らかに通達評価と乖離した物件にもですが・・・
ただ、今回は逆に最高裁がちょっと待ったをかけたのです。
高裁まで今まで通りだったのですが・・・・
長嶺さ~ん、何やってるんですか?頼みますよ。
私は法律は一般の人大勢がどう思うかが大事だと思っています。
そもそも人が作ったものを人が裁いてきた歴史です。
多くの人に支持されなければならない前提があると思います。
これを読んだあなたは
この富裕層がとった方法及び顛末をどう考えますか?
租税法律主義 VS 課税平等 の争いの構図です。
私は税法家としても、納税者としても
この富裕層の今回の事案は
認めるべきではないと考えます。
相続税の立法趣旨を逸脱し、
超高齢者が行った行為としては
形式上の法律行為は成立はしていますが、
その取引の内容目的は租税回避でしかありません。
このような事で法的安定性云々と
主張してもらいたくない者です。
もっと背景が異なる大事な
法的安定性ってあるんです。
こんな考え方で税理士やっています。
もっと異なる相続税対策を取り組んでいます。
興味があればご相談下さい。
SAS Tax Artist Office
租税訴訟補佐人税理士
TaxArtist®水島洋之